前回は「海」、すなわち商圏について考えた。どのエリアで戦うのかを定めることが販促設計の第一歩である。
具体策として示したように、地図にマッピングし現時点での自社の商圏を明確化して「勝ちパターン」を把握する。その上で、現時点の商圏を再び狙うのか、あるいはあえて空白エリアを狙っていくのか。これは経営者自身が選択することだ。
では、その海において、次に考えるべきこととは何か。それが「魚」である。つまりその商圏の中の誰を狙うのかという問題である。
販促を考える際、「ターゲット」という言葉が頻繁に使われる。しかし、その中身はどこまで具体化されているのだろうか。
例えば、「30代ファミリー層」、「戸建住宅に住むユーザー」といった、ざっくりとした設定で止まっていないだろうか。これでは「魚」は見えていない。
同じ「30代ファミリー層」でも、何を求めているのかは大きく異なってくる。住宅形態、家族構成、困りごとなどその世帯ごとに求めているものは異なる。例えば、「ペットインテリア」はもっともわかりやすい事例だろう。ペットを飼う世帯というだけでなく、そこからさらに種類や年齢によって細分化しなくてはならない。
その中でも、特に重要なポイントとなるのが、その世帯におけるインテリア製品購入に際しての価値観の違いである。「安心して任せたい」のか、「納得して選びたい」のか、「できるだけ費用を抑えたい」のか。まずはこの三つの価値観タイプを見極めて「魚」を決める必要がある。この3つは、それぞれ訴求すべき内容や伝え方が大きく異なるためである。誰に対して販促を行うのか、曖昧なままでは伝える内容も曖昧になる。
「すべて」は誰にも刺さらない
魚は「一種類」に絞る
よくある失敗例が、「すべての人」に向けた販促だ。「多くの人に届けたい」と思うばかりに、できるだけ広く訴求しようとする。価格、品質、デザイン、対応力。これらをすべて盛り込んだチラシになる。その結果、一つひとつの要素が希薄になってしまい、誰にも刺さらない販促になるのである。
それではどう考えればいいのか。結論はとてもシンプルである。
それは「狙う魚は、一種類に絞る」ということだ。あれもこれもと狙うのではなく、今回の販促で反応して欲しい顧客像を一つに定める。その一種類に定めた顧客に対して、徹底して有用な情報を提供していく。
そのためには、年齢や家族構成、住まいの状況(築年数など)、困りごとといった要素を具体的に整理する必要がある。
さらに重要なのは、「対象外」を明確にすることだ。「とにかく安ければいい」という層なのか、それともそこを対象外とするのか。誰に売るのか決めると同時に、誰に売らないかを決める。それが魚を定めるということである。
魚によってエサはかわる
魚が違えば、使うエサも変わる。「安心して任せたい」人に対して、価格の安さを強調しても響かない。一方で価格を重視する人に対して、想いやストーリーを伝えても届かない。多くのインテリア専門店は、インテリアにこだわりの強いユーザーを魚に選んでいるが、販促については価格の安さを強調しがちだ。それでは、狙った魚は釣れない。
誰に届けるのかによって、何を伝えるのか、どの順番で伝えるのか、どのような言葉を使うのかは違ってくる。チラシの見出し一つ、写真の選び方一つで反応は大きく変わるのである。
どのような「魚」が自社に合っているのか
そして、ここでも重要になるのが自社の状況である。大型漁船のようにすべての魚を釣ることはできない。自社の強みは何か、どの顧客層で成約率が高いのか、どのような提案が評価されているのか。過去の実績を振り返ることで、自社が釣りやすい魚が見えてくる。
魚もまた、広げるものではない。見極めるものなのだ。
ターゲットが定まれば、「伝える内容が整理される」、「言葉に一貫性が生まれる」、「訴求の軸がぶれなくなる」。その結果、販促の精度は大きく高まるのだ。
設計は続いていく
販促設計は、「海」と「魚」で終わるものではない。顧客はすぐに動くものではない。まだ気づいていない段階もあれば、比較検討している段階もある。
次に考えるべきは「深さ」、すなわち顧客が今どの段階にあるのかという視点である。狙った「魚」は、今どの段階、どの「深さ」に潜んでいるのか。そこまで整理してはじめて販促は設計として機能する。
販促は打ち手ではない。釣れるかどうかは、すでに設計の段階で決まっている。その次のカギが「深さ」である。
■【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第1回】
「販促」とは需要創造の仕組みづくり
設計思考への転換
■【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第2回】
海――商圏を決められない専門店は勝てない
■【シリーズ インテリア専門店の販促を考える 第3回】
魚――誰を狙うのかを定める


